埋もれた名作 その2 「F~ファナティック~」
今回取り上げるのは、「プリンセスソフト」の、「F~ファナティック~」という作品。
この作品は、「Legend of Camellia」さんのプレイレポート(記事は、こちらになります)を見て、初めて知りました。
なお、プレイしたのはPS2版で、Windows版も販売されている、「一般向け」作品です。
(とはいえ、PS2版も「15歳以上推奨」ですし、子供にやらせるのはあまりにも危険ですが)
このゲームは、19世紀のロンドンを舞台にした作品です。
となると……そうです。有名な、「切り裂きジャック」事件をモチーフにした作品です。
美少女ゲーム好きなら、同じく切り裂きジャックを扱った、「PajamasSoft」の、「PIZZICATO POLKA」を思い出すかもしれませんが、あくまで個人的な意見では、そちらを大幅に上回る完成度を誇る作品だと思います。
このゲームは、いわゆる「ループ」型、また、「クリアによって選択肢追加型」のシナリオをとっており、同じ時系列を何度もめぐりながら、より事件の核心へと進んでいくタイプのシナリオです。
(なお、私の場合、こういう「逆行」タイプは、YU-NO以来最も好きなジャンルの一つです)
印刷されている、かわいらしい少女たちの絵にだまされて買うと、相当精神的なダメージは大きいと思います。
(なお、ゲーム中のグラフィックのクオリティーも、相当高いです…それだけに、「残酷な」描写も映えるのですが)
そこで繰り広げられるのは、まさに「ファナティック(狂気的)」な世界。
それも、単なる狂気ではなく、「行き過ぎた愛情」などの、より「内面的な狂気」を扱っているため、「鬱」の度合いとしては、かなりのものがあると思います。
バットエンド(個別ルートにおける)の悲惨さは、息が詰まるような感じを受けます。
また、中盤以降は、かなりスケールの大きい物語となり、それでいながら物語としてはきちんと整合性がとれ、破綻していないところは、すばらしいと思います。
そして、基本的にはどのキャラクターにも「救われる」エンディングがありますので、決して単に悲惨というわけでもありません。
また、最後の「大団円」では、メインキャラクターはほぼ全て幸せな結末を迎えていますし、そうでないメインキャラクターも、納得の行く形で描かれているので、達成感は相当なものがあると思います。
個人的にお気に入りのキャラクターは、「フラン」。
ルートによって、冷静なバージョンと、「幼い」バージョンがあるのですが、その使い分けは、見事の一言だと思います。
声優さんも、よくここまで演じ分けられたものだと、感心しきりです。
どちらのバージョンでも、とっても魅力的ですし。
個人的には、「不幸になる運命を自分が変化させる」というキーワードにピンと来た方には、かなりお勧めの作品だと思います。
具体的には、「アリスソフト」の、「Only you」とか、「KID」の、「never7」などの作品が好きな方には、お勧めできると思います。
ここからは、相当なネタバレ、および個人的な最大の弱点をあげさせていただきます。
いつものとおり、反転はさせておきますが、注意してください。
大団円のところで、二度も「メインキャラ」と書いたのには、理由があります。
それは、サブキャラクターの三人は、どうあがいてもトゥルールートでは救うことが出来ないからです。
私の好きな「YU-NO」の、「運命」という言葉の定義に、「どのようにしてもその結末が導き出される状態」というものがあります。
その定義からすると、実は、この中の一人は、別のルートでは自らの手で命を救うことすら可能なため、「死すべき運命」の輪の中にはとらわれていないはずなのです。
それにもかかわらず、ヒロインたちの力まで借りた「トゥルーエンド」で、逆行できる時系列以前に行われてしまった殺人はともかく、この三人を救えないというのが、個人的に非常に納得がいかず、結果としてこのゲームに対し、結果としてこのゲームの終わり方に対し、あまり好意を持つことができませんでした。
(とんでもない大ポカでした。これだけ語ったゲームが「嫌い」なはずがありません。ただ、結末があまり好きでないというだけです。平成18年6月2日修正)
最終的な評価としては、
カラット(ボリューム):4
硬度(システム):C(セーブ画面、およびスキップが、ちょっと使いにくいので…)
カラー(グラフィック):A-
クラリティ(音楽):B(オープニングのボーカルは、相当好みです)
ブリリアンス(キャラクター):B+~A-
カット(シナリオ):B+
クオリティ(総合評価):B(秀作~名作)
宝石のイメージ:「歪んだ」真珠(つまり、「バロック」です)
のような形となります。
なお、個人修正により、総合評価がかなり減点されていることを付け加えさせていただきます。
無名ですが、もっと有名になれても良かっただけの質を有した作品だと思います。
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