今回レビューするのは、「戯画」の、「この青空に約束を―」です。
ちなみに、この作品は、PC用の、18禁ゲームとなりますので、ご注意ください。
また、ネタバレは色を変えております。
カラット(ボリューム):4
まず、オープニングまでに、結構時間(私の場合で、1時間以上)がかかります。
そして、共通ルートが結構長く、そこまでで数時間かかるのが普通だと思います。
そこから、個別ルートに入り、後は選択肢の無い一本道となりますが、個別ルートのボリュームも結構ある(それに、会話が面白いので、つい聞き入ってしまう)ので、結構長いと思います。
隠しルートは、全員攻略後にグランドエンディングを見て、それから発生しますしね。
ボリュームは、相当大きいと思いました。
硬度(システム):S
このシステムの完成度、システムだけでほかの会社に販売し、もっと広めて欲しいくらいです。
設定項目も充実していて、セーブ・ロードは右側にマウスを持っていくことで現れるバーから一発で行えて、キャラクターの表情はころころ変わって…。
その上、一番驚くべきなのは、これだけ充実していながら、「比較的軽い」ということです。
PCの性能にもよるのでしょうが、私の環境では、ストレスを全く感じませんでした。
バックログもロード直後から出来ますし、文句のつけようがありません。
個人的に、今回の作品の「白眉」といえるシステムが、「イベントモード」です。
これは、イベント単位で構成されるこのゲームにおいて、一度見たものであれば、好きなイベント(Hシーンに限らず、「全てのイベント」が対象となります)を見ることが出来るというもので、このシステムは本当に全てのゲームで採用して欲しいくらい、気に入りました。
これで、「お気に入りのイベント前でセーブデータを取っておく」という作業からも解放されます。
余談ですが、この「イベント」の名前、分かる人にとっては「にやり」とさせられます。
「あの素晴らしいおせち料理をもう一度」とか、「KOOLになれ、藤村静」(COOLでないところがポイント)、「さえ、ちゃんとしようよ!」など、タイトルだけで笑わせてくれます。
カラー(グラフィック):A-
ちょっとのっぺりした顔立ちですが、まあこれは個性だと思います。
表情豊かで、見ているだけで状況が手に取るように分かる→イベントのグラフィックが少ないことを感じさせないというのは、すごいと思います。
演出効果(キャラクターに「おどろ線」が入るとか、画面にひびが入るとか)も充実していると思いました。
ただ、CGモードに入ると、イベントのグラフィックのほとんどがHシーンに費やされているのは、容易に分かってしまうのですが…。
それでも、「通常の絵」がとっても表情豊かなので、ポイントは高いです。
クラリティー(音楽):音楽A+、キャラクターボイスB
音楽も、充実しております。
シーンにあった音楽がきちんと用意されていますし、また「音楽の練習中」には、音楽モードに登録されない「そのキャラクターの拙い演奏」が流れるなど、音楽の演出にはすばらしいものがあります。
個人的には、「Through The Dark」、「TWO OF US,SEVEN OF US」などが、とってもお気に入りです。
ただ、キャラクターボイスは、相当癖があると感じました。
特に、それが顕著なのが、「浅倉奈緒子」です。
この声は、ちょっと「学生」には聞こえにくかったかも…(苦笑)。
演技力は全く問題なかったのですが。
グランドエンディングで、「全員による斉唱」があるので、これは必見です。
途中で「ずれる」のは、下手なのではなく、演出で、すごいと思いました。
グランドエンディングを見た後に、個別エンディングで「声あり」のエンディングが見れるようになります。
ブリリアンス(キャラクター):A+~B
キャラクターは、とても生き生きと描かれています。
それこそ、「このキャラクターたちと生活できたら、楽しいに違いない」と思わせるくらいに。
また、サブキャラクターに至るまで、きちんと描写されているのが、非常に好感が持てます。
ただ、一部のキャラクターで、心理描写が不十分のため、突然恋に落ちるような展開になってしまうのが、気になりました。
(これは、「シナリオ」で評価すべきポイントなのかもしれませんが…)
また、このゲーム、「主人公」がとってもすばらしいです。
ちょっとスケベなところがあって、「好き」であることをきちんと表現できて、行動力があって、勉強が苦手(笑)と、ちょっと昔の18禁ゲームの主人公に近い、「行動派」です。
そのため、「障害があるのなら、自らそれを乗り越えてみせる」という動きになるため、見ていて非常に気持ちが良かったです。
ちなみに、18禁シーンは結構「濃い」上、キャラクターごとに「そのキャラクターにあった」掛け合いが楽しめるので、読み飛ばすことなど出来ませんでした。
私は、基本的に18禁シーンはあまり好きではないのですが、このゲームの場合、半ば「ギャグ」のようなピロートークもあったりするので、かなり楽しめました。
移植はほぼ確定なのですが、この部分、単純に削ると、キャラクターの魅力を損ねそうです。
カット(シナリオ):総合的にはA
シナリオは、個々にさまざまな展開が用意されていて、飽きさせません。
共通ルートでも、読み応えがあって、さらに個別ルートも十分なボリュームで楽しませるこのライターの腕前、すごいと思います。
ちょっと「六条宮穂」だけレベルが落ちるように思いましたが(ファンの方は、済みません!)、ほかのキャラは、どのキャラクターもとってもよくかけていました。
ただ、このゲームの「暖かい雰囲気」のために、細かい描写をしないところがあって、そこはプレーヤー自身が、与えられた情報から補完しないと、「説明不足」なシナリオと写る方もいると思います。
また、「きつい描写」が無いゆえに、ちょっとシナリオの「深さ」が浅いという傾向が見られますが、これはバランスの問題であり、ある程度までは仕方が無いのかな…と、私個人は考えました。
個人的には、一番描写不足を感じたのが、「藤村静」のシナリオです。
このシナリオ、もう少しだけ練りこめば、「ありえたかもしれない、もう一つの「家族計画」」にまで昇華できるパワーが含まれていただけに、惜しさを感じました。
グランドエンディングシナリオは、初期攻略キャラクター6人全員を攻略すると、タイトルに表示されます。
これの出来は、とってもすばらしかったです。
「約束された別れ」を、見事に描ききってくれました。
その後の「隠しシナリオ」は、彼女自身の口にするセリフ、「まだ戦いは終わっていない」を象徴するような、ちょっと中途半端なもの。
もう少し描写して、そして物語最大のなぞを「主人公が認識する形で」解決して欲しかったです。
この部分で、かなりの減点となっております。
クオリティー(総合評価):A(名作~傑作)
個人的には、大満足できました。
ちょっとだけ描写不足を気にする方もいるかもしれませんが、「作品で提示された情報」から、十分に補完できると思います。
また、「全体としての終盤」も、非常にいい出来で、感動できました。
18禁というジャンルに抵抗がある方には、お勧めできないですが、恐らく「純愛系」を好む方全てが受け入れられる、丁寧に作られたすばらしい作品だと感じました。
この出来であれば、お勧めできます。
宝石のイメージ:赤水晶
アクアマリンも考慮に上がったのですが、やはりこのゲームの「中核」である、赤水晶がイメージとしてももっともふさわしいと感じたので、これにします。
とっても「効果的」な使われ方をされていましたしね。
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